韓国の北朝鮮脱出住民(脱北者)団体による北朝鮮批判ビラの散布を巡り、北朝鮮に近い南北境界地域では緊張が高まっている。北朝鮮がビラへの非難を繰り返す中、脱北者団体は散布を強行する構えを崩さず、地元住民は反対のための団体行動を予告している。警察は24時間体制で警戒に当たっている。
韓国・ソウル近郊の京畿道は17日、北朝鮮との境界付近にある五つの市・郡を11月30日まで「危険区域」に設定し、北朝鮮の体制を批判する団体などが北朝鮮に向けてビラを飛ばすためにこのエリアに立ち入ることを禁じる行政命令を出した。
北朝鮮へのビラ散布問題を巡って「危険地域」が設定されるのは初めて。行政命令の文書によると、対象地域は漣川郡と抱川市、坡州市、金浦市、高陽市の軍部隊を除く全域で、ビラ散布関係者の立ち入りを規制するとともに、関連物品の準備と運搬、散布、使用などの行為を禁止する。道はその理由を「災難予防」と説明した。
京畿北部警察庁などによると、警察は脱北者団体が不意打ちでビラを飛ばす場合に備え、北朝鮮に近い京畿道の坡州と漣川地域に現在は約800人を配備している。人員は先週から2倍に増えた。坡州の臨津閣など、脱北者団体が過去に北朝鮮に向けてビラを飛ばした場所で待機している。
脱北者団体「自由北韓運動連合」は25日、朝鮮戦争の勃発から70年となることに合わせ、風船やドローンなどを使って金正恩(キム・ジョンウン)政権を批判するビラ100万枚を予定通り散布するとしている。脱北者団体やキリスト教団体などは北朝鮮にビラを飛ばす際に前もって場所を明かす場合もあるが、奇襲的に飛ばすことも多いため、関係当局は警戒している。
北朝鮮へのビラ散布に反対する地元住民らは「散布は表現の自由ではなく敵対的行為であり、朝鮮半島の平和を脅かす」などとする声明を発表し、団体での行動を予告している。22日には坡州の公園で複数の地元団体が散布反対の決起大会を開くという。
一方、京畿道は北朝鮮へのビラ散布行為に対し、必要ならば現行犯逮捕するなど厳しい対応を取るとしている。
北朝鮮は4日、金正恩国務委員長(朝鮮労働党委員長)の妹の金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長がビラ散布を非難する談話を出して以降、韓国への非難を繰り返している。9日以降は南北首脳間のホットラインをはじめ、南北間の全ての通信連絡線を遮断している。
韓国政府は、北朝鮮批判ビラの散布は南北交流協力法などに違反するとして、警察に自由北韓運動連合など2団体の捜査を依頼した。
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