南北経済協力で北朝鮮との関係改善の突破口を見出そうとする韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権と、その単独行動を憂慮する米トランプ政権が再び衝突した。
韓国独自の対北朝鮮制裁、「5・24措置」を解除しようとする文政権に対して、米国務省は米朝協議と歩調を合わせることを要求した。文大統領は「米朝対話ばかりに拘らず、南北間にできることを探し出したい」との意志を明らかにしている。
万が一、米国との事前調整なしに南北経済協力が推進される場合、米韓関係に大きな影響を及ぼすものとみられる。
韓国統一部は20日、定例ブリーフィングで「5・24措置は歴代政権によって柔軟に運営され、例外措置が取られてきた」と述べ、「政府は5・24措置が南北間の交流協力を推進する上で障害にならないとみている」と明らかにした。2010年3月26日、韓国領海上でパトロール中の天安艦が北朝鮮の魚雷攻撃で沈没した。
李明博(イ・ミョンバク)政権は、北朝鮮に対する報復措置として、独自の北朝鮮制裁である「5・24措置」発動した。
主な内容は、
▲開城工団と金剛山(クムガンサン)を除く訪朝不許可
▲南北交易の中断
▲対北朝鮮新規投資の禁止
▲北朝鮮船舶の運航不許可
▲対北朝鮮支援事業の保留
▲人道的支援を含むすべての支援の遮断
ーーなどだ。
北朝鮮はこの10年間、天安艦事件は自分たちの仕業ではないと主張し、「5・24措置の解除」を韓国側に要求してきた。韓国政府は、北朝鮮側の謝罪と再発防止など責任ある措置が前提と主張してきた。
しかし、統一部の説明のように、歴代政権下で数回、例外措置が適用されてきた。5・24措置を発動した李明博政権ですら、翌年の2011年に非政治と文化人、宗教人の訪朝は選別的に認めるという例外条項を設けた。
北朝鮮に最も厳しかった朴槿恵政権でも韓・北・ロの物流協力事業の羅津(ナジン)・ハサン・プロジェクトを5・24措置の例外として推進した。民間団体の対北朝鮮肥料支援を承認したり、地方自治体や民間団体の南北交流を許可したりしてきた。
文在寅政権でも、2018年の平昌五輪の北朝鮮選手団の訪韓を皮切りに、金ファミリーの金与正(キム・ヨジョン)氏の大統領府訪問など、活発な交流が行われた。
このような状況で、統一部が「実効性がかなり失われた」と明らかにしたことで、韓国内では文在寅政権が5・24措置を事実上廃棄し、南北経済協力を推進していくという分析が出ている。
実際、政権関係者と与党関係者は、南北関係の改善のために北朝鮮の謝罪がなくても、5・24措置を解除する必要があると強調してきた。北朝鮮専門家出身の金然哲(キム・ヨンチョル)統一部長官は、その代表的な人物だ。
金長官は2015年、「北朝鮮は(天安艦攻撃を)やってないと主張しているので、謝罪を受けることはできない」とし、5 ・24措置の解除に北朝鮮の謝罪がなければならないという朴槿恵政権の立場を強く批判した。
文在寅政権のこのような雰囲気について、米国の国務省は米国の声(VOA)に送った論評を通じて「米国は南北協力を支持し、南北協力が必ず(北朝鮮)非核化の進展と歩調を合わせて進められるよう、同盟国である韓国と調整している」と話した。
南北関係改善は米朝交渉の枠組みの中で進められるべきだという従来の立場を改めて確認したのだ。
5・24措置解除をめぐる米韓間の摩擦は、今回が初めてではない。2018年10月10日、国会に出席した姜京和(カン・ギョンファ)韓国外交部長官は、「5・24措置に対する解除の用意があるか」という与党議員の質問に対し、「関連部処で解除を検討している」と答えた。
翌日、ホワイトハウスの担当記者から姜長官の発言に対する米国の立場について質問されると、トランプ大統領は「They do nothing without our approval.(彼らは私たちの承認なしに何もしない)」と答えた。
当時、トランプ大統領の「approval承認」という表現をめぐり、韓国では「外交欠礼だ」という反応も出た。だが、姜長官の「解除検討」発言を、統一部長官が「事実ではない」と否定することで議論はおさまった。
今回の発言に対する米国の立場は、2018年当時と酷似している。トランプ大統領ではなく、米国務省が前に出てやや温和な表現を使った点だけが異なる。
ところが、文在寅政権は今回は後退できないという姿勢だ。文政権の初代大統領秘書室長を務めた任鍾皙(イム・ジョンソク)氏は21日、メディアとのインタビューで「今年中に米朝間に進展がなければ、文大統領は、米国と十分に議論を尽くした後、(米国から)否定的な見解が出ても、(南北関係改善を)進めるだろう」とした。
続いて「われわれの思う通りの米朝関係進展ができないのなら、新たな決心が必要だ」「米国は越境を基準にして、物資が(北朝鮮に)渡れば無条件に規制しようとするが、話にならない」「米国の局長級や室長級からだめと言われると、我々は何の決定もできなかった」などと、米国主導の南北関係に対する反感を示した。
民間人の身分に戻っている任氏のこの主張に対して、米国務省は異例の論評を出した。「南北協力は必ず非核化の進展と歩調を合わせなければならない」と再度強調したのだ。
残り任期2年で、南北関係の改善に全力を傾けようという文政権と、対北朝鮮制裁に穴を作ることになる南北経済協力を警戒するトランプ政権。
再び核武装を強調するようになった北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権の3者の対立によって、朝鮮半島にもう一度荒波が吹き荒れるのかもしれない。
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